2007年のRadio Headによるリスナが値段を決めてアルバムを購入するやり方、そしてSaul WilliamsのアルバムをMP3でダウンロードして聴いてからお金を払うか決めるやり方は、音楽業界に新しいアイデアを持ち込んだエポックメーキングな出来事でした。

indierevolution.jpは、この一連の流れをリアルタイムに体験して、これがパソコンソフトにおける、試して気に入ったらお金を払うフリーウェアあるいは機能制限版を試して気に入ってお金を払うと限定解除されるシェアウェアのあり方に似ていると考えました。そして、このようなやりかたを勝手に「シェアウェア」に倣い「シェアMP3」と名付けました。
インディの中には、楽曲を無料で公開して、気に入ってくれた人だけが対価を払ってくれるやり方ができれば、もっともっと楽曲を公開してみたいという人もいるでしょう。ぜひシェアMP3を検討してみてください。

今やインディでもアマチュアでも自分の楽曲をネットでどんどん公開することができるわけですが、簡単になったとは言え、いざ楽曲を販売するとなると、CD BabyやiTunes Storeなどに登録したり、契約したり、といった手続き上のハードルがあります。まず聴いてもらって気に入ったらお金を払ってもらうというやり方を採用するmf247でさえ、登録の手間や審査を考えると決して敷居が低いとは言えません。

また、ある程度の価格を付けるとなると、なかなか自信を持って販売に踏み切れないということもあるでしょう。このような状況では、シェアMP3を実践することは難しいです。

indierevolution.jpでは、いかにシェアMP3を実現するかを考え、以下のような条件が必要と結論しました。
  • 楽曲データは、自分のホームページやサーバにアップロードし、自分で管理でき、ダウンロードもそこからしてもらえることが大事。
  • 決済部分は、会員登録などしなくても、商品(楽曲/アルバム)登録するだけで、利用できる簡便なものでなくてはならない。
  • 購入者は、会員登録などしなくても、クレジットカードだけあれば、オンラインで決済できなければならない。
  • 購入者の情報がフィードバックされ、必要なら、お礼メールを送ったり、ダウンロードURLを返信したり、CDを郵送できなければならない。

まず、インディが、自分のホームページでMP3形式の楽曲を勝手に無料で配れることが必須です。このやり方なら、いつでもアップロードしたり、更新したり、削除したり、自分ですべてを管理できます。MP3形式を使うのは、これがiPodでもWalkmanでも、MacでもWindowsでも聴ける最も汎用性の高い形式だからです。

今や、誰でもホームページが持てる時代です。レンタルサーバも安価ですが、お金をかけなくてもホームページを持つことはできます。例えば、
MySpaceなら無料でホームページが作れて、MP3データもアップロードでき、無料でダウンロードできるようにする設定があります。無料のホームページは、色々なところにありますし、多くのISP(インターネット接続プロバイダ)でも、会員に無料でホームページスペースを提供しています。楽曲データをアップロードすると公開してくれるサービスは山ほどありますが、そういったサービスを使う必要はありません。

次に気に入った人がお金を払ってくれるシステムが問題です。海外では、PayPalというオンライン送金の方法が一般化しているので、これを使ってもいいのですが、日本ではまだまだ普及しているとは言えません。シェアウェアの世界では、クレジットカードも使えるkagi.comのような決済代行サービスもありますが、日本のインディが海外のサービスであるPayPalやkagi.comを使うのは実用的でないし、合理性に欠けます。

そこでindierevolution.jpでいろいろと調べたところ、自分が販売しているデジタルコンテンツの料金をクレジットカードで決済代行だけしてくれるデジタルポイントコレクションというサービスがありました。このサービスは、カードさえあれば誰でも使えるもので、楽曲を買うためだけに会員登録して会員情報を管理したりする必要がありません。似たようなサービスがあれば、それでもいいんですが、どこも購入のためだけに会員登録をさせたりするものばかりで、今のところ同じサービスは見つかりませんでした。

注意:この項を書いてからしばらくして、デジタルポイントコレクションはサービスを終了しました。他に類の無い希有なサービスだっただけに残念です。どこか他の似たサービスを探す必要がありますが、果たして、ここまで柔軟で自由な決済代行サービスが存在するのか、今後登場するのか、微妙なところです。


デジタルポイントの場合、決済毎に手数料(11%+その消費税)がかかった上に、売り上げの送金時に振込手数料を作者が負担することを考えると、少なくとも500円以上の価格でないと意味がないでしょう。一曲ずつの決済に使うのでなく、無料で5曲とか10曲とか公開し、その全体の作品に対して500円あるいは1,000円と言った「おひねり」を募るようなやり方がいいでしょう。あるいは、販売するのはアルバムというくくりにして商品化するのもいいと思います。

ダウンロードした楽曲が気に入ったからお金を払ってくれるわけですので、払ってくれたリスナに対して、ものを郵送したり、データを追加ダウンロードしてもらったり、何か特別なことをする必要がないのもいいことです。払ってくれたら、お礼のメールくらいは送った方がいいですが、それさえもホームページに明記しておけば省くことはできるでしょう。

でも、シェアMP3をシェアウェアのコンセプトの応用と考えると、無料で公開するのは低品質のMP3ファイルで、料金を払ってくれた人にだけ高品質版のMP3データのダウンロードURLをメールで返信すると言ったやり方もいいと思います。あるいは払ってくれた人には、CDを送ってもいいでしょう。そう思うと、シェアMP3という考え方とデジタルポイントコレクションというサービスを組み合わせれば、インディレーベルのCD販売にも使えるわけです。インディレーベルがホームページでCDを売る場合の支払い方法に、簡単にクレジットカードを追加できるという意味でも、検討に値すると思います。

ちなみにJASRAC信託している場合、勝手にダウンロード販売はできませんし、著作権使用料を決済業者が支払うことになっていますから、シェアMP3においては、著作権使用料徴収代行団体にはいっさい信託しないことが必須です。カバー曲も同様の問題があるので、シェアMP3にはそぐわないでしょう(無理ではないですが)。

自分のホームページでMP3を無料でダウンロードしてもらい、気に入ったら、お金を払ってもらう:なんてすばらしいシステムでしょう。今や、このシェアMP3という方法が可能となったのです。曲は公開してみたいが、面倒な手続きは踏みたくない。あるいは公開する楽曲は自分で管理したい。気に入ってもらったらお金を払ってもらいたいが、一般的なオンラインストアの販売という大仰なやり方までは踏み込みたくない。そんなインディは、シェアMP3にトライしてみてください。

シェアMP3という考え方は、indierevolution.jpが勝手に考えたものです。一般化してくれたらうれしいですが、まだまだまったく知られていませんし、もっといい名前がついて普及すればそれでも構いません。そんな現状ですから、インディが個別にシェアMP3を実践しても、どこで誰がシェアMP3を公開/販売しているか、いつまで経っても分からないままでしょう。そこで、indierevolution.jpでは、シェアMP3を実践しているアーティストのリストを作りたいと思います。
問い合わせのページから、アーティスト名とホームページのURLだけ送っていただければ、確認後、リストに追加します。もちろんいつでも削除可能です。

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