さて、御土産音源の要素を一通り見ましたから、実際に現場では、どんな流れで御土産音源を実践すればいいか、説明します。

なお、御土産音源の録音と販売について、必ずライブを決定する際に会場側に説明し、その許可を取っておいてください。

カバー曲を録音して販売することは、日本の法律では違法になると考えられます。知り合いの曲なら、著作権者から許可を得るというやり方がありますが、JASRACなどの著作権使用料徴収代行団体に信託されている場合は、かならず管理団体に相談してクリアにしておいてください。

カバー曲だけ録音しないというやり方もありますが、その場合も、会場側にはその旨説明して了解してもらう必要があります。絶対に会場に迷惑のかかるようなことは避けなければなりません。

1)ジャケットの印刷:
まず、ライブの前の準備として、CDならジャケットやライナーノーツにあたるものを印刷します。御土産音源のメディアには、音源以外のデータや情報が保管されませんから、後になって、ライブの場所や日付などが分かるような資料を用意する必要があるのです。曲名なんかは、聴いただけでは分からないことが多いし、バンド名だって忘れられてしまうかも知れません。バンド名、ライブの場所と日付、曲目一覧、など、もう見たままライブ盤CDのジャケットのような感じが理想です。

「IndieRevolution Live At BudoTheatre, 24 May 2009」みたいなタイトルをつけて、後は曲目一覧があれば、最低限はクリアです。

さらに言えば、御土産音源もバンドのプロモーションの一環になりますから、御土産音源を買ってくれたお客さんがバンドのホームページを見に来てくれるように、URLなんかも書いておきましょう。

B5やA4のコピー用紙に印刷してもいいし、あるいは仕入れたUSBメモリのパッケージサイズに合わせてデザインしてパッケージの一部みたいに見せてもいいでしょう。

このジャケットについてですが、indierevolution.jpで、パソコンを使わず、簡単に実現する方法を模索した結果、
タカラトミーのXiaoが使えることが分かりました。Xiaoは、500万画素のデジタルカメラに、インクなしで名刺よりもちょっと小さいシール用紙に印刷できるプリンタが合体した製品です。Xiaoを使えば、ライブ当日のバンドの写真をシールに印刷し、ジャケットとしてお土産音源のパッケージに貼付けられます。またA4サイズの紙に手書きしたバンド名、ライブ会場名、日付、曲名、連絡先などを、当日撮影して、印刷し、パッケージに貼付けてもちゃんと読めます。つまり、パッケージの作成にパソコンを使わなくて済むわけです。1枚印刷するのに、1分弱かかるので、できればジャケットと曲目リストをライブの前に印刷しておく必要がありますし、お世辞にも画質がいいとは言えませんが、2010年2月現在、定価の半額の16,000円前後で買えるようなので、試す価値はあるでしょう。

余談ですが、indierevolution.jpの経験では、お客さんの中には、「USBメモリ、何それ?」、「MP3、何それ?」という人達も結構います。ジャケットを作る際には、USBメモリ/SDカードにMP3で保存されているので、パソコンがあればiTunesやWindows Media Playerなどで聴けること、そしてパソコンにコピーした後のメモリは、パソコン用の外部メモリとして使い続けられることも書いてあげると親切です。

2)SDカードおよびUSBメモリの仕入れ:
PCMレコーダで使うSDカードを用意します。SDカードも消耗品ですから、予備に数枚は準備しておきましょう。とりあえずは、512MBでいいと思いますが、別の項で触れたように1GBのが入手しやすければ、1GBでも構いません。

USBメモリも売れそうな本数だけ仕入れます。どれだけ売れるかは、バンドによっても違いますし、当然、その日のライブのできによっても違ってきます。ライブがグダグダだったら、やっぱり御土産音源も売れないでしょう。売れ残っても、次回再利用できるものですから、この際、30本くらいは用意しておいたらどうでしょう。

3)PCMレコーダのテスト:
当たり前の話ですが、PCMレコーダが正常に動作するか、事前にテストします。このテストは、あくまで稼働試験ですから、現地に入ってからやるのでなく、ライブの前にやっておきます。その際、挿入してあるSDカードの試験も行ってください。録音して、パソコンにさして、ちゃんと音源ができていて、それがミュージックプレイヤで再生できるか確認するのです。

楽曲のフォーマットの指定の仕方、リミッターとローパスフィルタの設定の仕方も確認します。

4)USBデュプリケータのテスト:
USBデュプリケータも現地でなく、ライブの前にちゃんと試験しておきましょう。

5)リハでのテスト:
現地でリハの時にも、ちゃんと録音して、複製できるか、どこでどう販売するか、どこに売り上げを保管しておくかなど、予行演習しておきます。会場によっては、PCMレコーダの設置が難しかったり、デュプリケータをおく場所がなかったり、電源が遠かったり、行って始めて分かることがあります。慌てないためにも、リハの時にちゃんとチェックしておきましょう。

楽曲のフォーマットがMP3で44kHzか48kHzのビット・レートが128kbpsになっているか確認し、リミッターは必ずオンにしておいて、ローパスの有る無しで音にどんな違いが出るか、確認しておきます。ローパスフィルタの周波数を選べる場合は、それぞれの設定でどんな違いが出るかも確認します。

6)直前の準備:
PCMレコーダの設定のチェックとレコーダ内のSDカードのフォーマットは行いましょう。

楽曲のフォーマット、リミッター、ローパスの設定が正しいか確認します。


7)会場でのプロモーション:
今日のライブが録音されており、ライブ終了後、その場で、USBメモリ/SDカードに複製されたライブ音源を販売することを、すべての観客に周知することが必要です。一人残らずすべての人が、御土産音源について知ることが大事です。

できれば、ポスターやチラシを作り、配布しましょう。特にライブ音源を販売する、と言うと、低品質なものを売りつけられると思う人もまだまだ多いので、ステレオで高音質(ITunes並)であることを明記してください。またUSBメモリ/SDカードにMP3で保存されているので、パソコンがあれば聴けること、そしてパソコンにコピーした後のメモリは、パソコン用の外部メモリとして使い続けられることもアピールするとよいでしょう。

そうした印刷媒体以外に、必ずライブの途中に口頭で宣伝してください。「今日のライブは、iTunes並の高音質で録音されています。ライブが終わったらすぐにxxxx円で販売します」といった簡単な宣伝でいいでしょう。そしてライブの終わりにも、「今日は最高のライブだった。皆さんもこの感動を買ってかえって、家で再度味わってください」といった具合に再度宣伝します。

ライブが終わって御土産音源が用意できたら、「これからライブ音源を販売します」とか「ライブ音源を販売しています」と声をからげて宣伝することが大事です。indierevolution.jpの経験から言うと、黙っていたら、誰も買ってくれません。ところが、1人買い始めると、急に人が並び始めます。

8)再生:
複製された御土産音源から1本を取り、その音源を実際に再生して、お客さんに聴かせてあげてください。会場のPAから出せれば理想的ですが、それが駄目なら、小さなパソコンやSDカード対応のミニコンポなどのプレイヤを持ち込んで鳴らしましょう。「これが今日のライブ音源です。凄い、いい音でしょう」と試聴してもらうわけです。

9)販売:
できあがった御土産音源をファンに販売するわけですが、単にお金をもらって、パッケージを渡すだけでは味気ないです。さらに言えば、買おうかどうか迷っている人に決断させるためにも、一工夫あった方がよいでしょう。

例えば、ファンと握手するとか、待っていてくれるファンと雑談して親交を深めるとか、名刺やミュージックカードを渡すとか、サンプルCD-Rを配るとか、パッケージにサインするとか、です。とにかく、何か、その日の、そのライブだけのイベント性を付加して、その場限りの特別な体験と思い出を提供するのです。

10)マスターの保管:
マスターの音源は、必ずパソコンに移したり、ハードディスクなど他の媒体にまとめてアーカイブ化して保管しましょう。例えば、将来、曲毎にトラックを切り分けてライブ盤としてCD化したり、iTunesで販売したり、過去のライブからいい演奏だけを集めて販売してみたり、何度も流用が可能です。もちろん、自分たちのライブの記録としての価値も大いにあります。10年後に、そのライブ音源を聴いてみれば、その時の記憶が鮮やかに蘇るに違いありません。そうした音楽と楽しい思い出の関係は、ファンだけのものでなく、インディミュージシャンにもあるわけですから。

-以上-