実際にライブの録音を何回か行えば分かると思いますが、R-05にしろH2nにしろ、あるいは他のPCMレコーダにしろ、ライブを録音する場合、録音レベルの調節が一つのネックになります。

というのも最大音量で音が割れないように調節すると、全体の音量がかなり下がってしまうことが多いのです。例えば、ライブハウスによっては、ミキサーにエンジニアが付きっきりで、曲に合わせて入力レベルを調整していることがありますが、あんな感じで、ライブ全体を同じ録音レベルで通すのは、中々に難しいのです。

ほとんどのPCMレコーダには、リミッターが付いているから、突然音量がでかくなっても、録音レベル内に抑えてくれるんじゃないか、と思うでしょうが、実際には、リミッターでも振り切ってしまい、音割れしたり、その後雑音が入り続けたりします。メーカにも確認しましたが、そのような現象は比較的よくあることで、入力レベルを下げる以外に対策はないようです。

面白いことに、比較的静かで、音量も落ち着いていそうなフォーク系の演奏では、サビでボーカルの音量が急にでかくなったりして、録音レベルを振り切る可能性が高いため、入力レベルの調節が難しいようです。音量がでかくて簡単に録音レベルを振り切ってしまいそうなロック系のライブの方が、最初から最後まで一定の音量で演奏し続けるので、入力レベルを適切に合わせておけば、振り切ってしまう心配は少なかったりします。

かと言って、フォーク系のライブで、サビででかくなるボーカルに入力を合わせると、全体に録音レベルが低めになってしまい、聞き取りにくくなる、といった具合で、PCMレコーダだけで実現するのは、至難の業です。

一つの解決策は、PCMレコーダの最低入力レベルで録音を行い、それをデジタル的に倍増させることです。例えば、H2nの場合であれば、MIC GAIN(マイクゲイン)を低めにして録音し、それを後でノーマライズします。

ゲインが低い録音は、音量が小さくて実用になりませんが、ノーマライズすることで音質劣化させずに音量を上げられます。ただし、ノーマライズには、ものすごい時間がかかりますから、お土産音源を実現することは不可能です。

このノーマライズにかかる時間をいかに短縮するか、が、ライブの録音を、その日の内に販売する、お土産音源のカギとなるわけです。

さて、indierevolution.jpは、数年に渡り、いかに簡単に、できるだけ高品質でライブを録音し、それを当日販売するか、実験を重ねてきました。その結果、最善の選択肢は、PCMレコーダとパソコンを併用し、パソコンの録音ソフトで録音を行うことだと結論しました。

パソコンと併用する最大の理由は、パソコンの録音ソフトを使えば、入力レベルが自由に調整できるからです。例えば、前出のようにH2nでMIC GAINが低い小さな音量でも、パソコン側の録音ソフトで2倍以上のレベルに増幅させれば、良好な結果が得られるのです。

それ以外にも、録音ソフトでは、PCMレコーダとは比べ物にならないくらい多くのエフェクトが利用できるということがあります。あまりにも複雑なことはお勧めしませんが、リミッタも細かく調整できるし、イコライザも使えます。特にイコライザは、ライブハウスの音響に合わせて毎回調節することで、音源の質を目に見えて高めることができます。

なお、パソコンと併用する場合のPCMレコーダは、H2nをお勧めします。なぜR-05ではなくH2nなのか、というと、H2nには、パソコンにUSBで接続すると、入力機器として認識される機能があるのです。これにより、H2nの優れたステレオマイク機能を使い、高音質なデジタル信号としてパソコン側に入力できるわけです。

一方、R-05では、R-05をパソコンが入力装置として認識しませんので、R-05のアナログオーディオ出力を音源としてパソコンに入力することになります。アナログ音源を増幅させると、デジタルでの入力を増幅した場合と比べて、音質が著しく低下するため、お勧めできないのです。

では、パソコン側の録音ソフトは、何が良いのでしょう。録音することだけを考えれば、どんなソフトでも構いません。Macなら、無料で付いてくるGaragebandで構いませんし、Windowsには、フリーウェアでいいものが見つかるでしょう。

ただし、お土産音源に限って言えば、こうした録音ソフトは実用になりません。

それは、ほとんどの録音ソフトでは、録音した音源をファイルとして利用するために、書き出しという作業を行わなければならないからです。この書き出しという作業は、録音した音源をMP3とかAACとか、お土産音源で使用するオーディオ・ファイルフォーマットに変換(エンコーディング)しながら行われます。結果として、ライブ全体を書き出すには、数十分あるいはそれ以上に長い時間がかかるのです。

つまりパソコン側で録音する際に、同時にMP3やAACなどの最終ファイル形式でファイル保存する録音ソフトを使う必要があるのです。

indierevolution.jpで調査した結果、このような録音ソフトとしては、Mac OS X用の
Rogue Amoeba Audio Hijack Proが比較的シンプルで使いやすいのでお勧めです。Windowsでも、Total Recorderというソフトが、録音しながら指定したファイルフォーマットで同時にファイル保存できるのですが、使い勝手が今ひとつで、あまりお勧めはできません。Windows用で、他に似たようなソフトがあるか分かりませんが、できれば、もう少し使いやすいソフトを探した方がよいかも知れません。

Audio Hijack Proの利点は、入力音量を簡単に倍増させられる上に、音源に各種エフェクトを適用できることです。前出のイコライザやリミッタも使えますし、ステレオバランスやローパスフィルタなども使えます。ファンの多い、
George YohngのW1 Limiter(Waves W1のクローン)のような外部プラグインを追加することもできます。エフェクトを色々と使うと、パソコン側の負担が増え、エラーの可能性が高まるので、できれば、録音レベルの倍増だけ、どうしても必要ならイコライザだけ使うのが理想です。

前述の通り、Audio Hijack Proでは、録音を終了させると、同時にMP3やAACなどの指定したフォーマットのファイルがすぐに利用可能になります。つまり、そのまま販売可能な状態のファイルになるのです。

過去に携帯電話で再生可能なmicroSDカード版お土産音源を作成する実験を行った際には、約2時間のライブで、マスターのmicroSDカードを作成するまで、10分かかりませんでした。後は、このマスターmicroSDを複製したものを販売するだけですので、ライブ終了後、15分あれば、最初のお土産音源が発売できるわけです。MP3で保存したファイルを、単にUSBメモリにコピーして販売するなら、もっと素早く作業が完了するでしょう。

まとめると、

1)Zoom H2nをデジタル入力装置として使う。

2)Zoom H2nのMIC GAINはLに設定する。

3)Zoom H2nは、MacintoshにUSBで接続し、入力装置として認識させる。

4)Macintosh側では、Audio Hijack Proを使い、H2nからの入力を録音する。

5)ファイルフォーマットは、MP3を指定する。

6)Audio Hijack ProのEffects画面にあるGainで、入力されてくる音源を適当な音量まで倍増させておく。なお、Audio Hijack Proのメイン画面上部の音量メータは、録音される音量とは無関係なので、勘違いしないように注意が必要だ。

録音される音量は、Effects画面の縦長のインジケータでOut Peekを指定して、メータが振り切れないようにチェックすればよいだろう。Gainでは、最大約2.4倍まで録音音量を倍増できるが、それでも音量が小さい時は、Effects画面にDouble GainあるいはGainを追加して、さらに倍増させることも可能だ。

7)必要ならEffects画面にイコライザを追加して、調整しても良い。

8)録音が終わったら、ファイルは即座に利用できるので、USBメモリにコピーしたり、
Mo-Sic Download化して、販売すれば良い。

こうして録音した音源は、お土産音源として当日販売するだけでなく、後日再販したり、オンラインで配布/販売したり、場合によっては、トラック毎に切り分け、ライブアルバムとしてiTunes Storeで販売しても良い。

ちなみに、録音に使うMacintoshは、持ち歩けて現場でも邪魔にならないノートブックタイプが理想だが、最近では、素晴らしく薄く、軽い、MacBook Airが、比較的安価に買えるようになったので、お勧めしておく。

- 以上 -