Indierevolution.jpでは、インディが自作の曲を販売する上で、これまでにない、新たな媒体や方法を、常に調査、模索、実験、しています。そして、1つの新しいアイデアについての1年以上に渡るコンセプトの検証と試験を経て、その実用性を確認して、Mo-Sic(モージック)という名前で数年前に発表しました。

Mo-Sicのアイデアは、「CDに代わる媒体」は何か、という疑問から生まれました。CDの売り上げが毎年落ちていることは、周知の事実ですが、それに代わる媒体はまだ登場していません。着歌フルやiTunes Storeなどデジタル販売が伸びているとは言え、CDの売り上げの落ち込みをカバーするほどではありません。

ただでさえプレスに大金がかかり、保管場所を取り、持ち歩くには重く、販売の機会も比較的少ないと、インディに取ってお荷物になりがちなCDが、さらに売れないとなったら、インディは何を売ればよいのでしょう?

この問題に応えるには、CDとデジタル販売のギャップを埋めるような媒体が登場する必要がある、と考えたindierevolution.jpがたどり着いたのが、Mo-Sicというアイデアなのです。

CDに代わる媒体と言うと、音楽のコンテンツの新しいパッケージングのことと思うかも知れませんが、ことはそれほど単純ではありません。新しい音楽フォーマットに移行するということは、再生するために新しいプレイヤが必要になるということです。しかし、今の時代、消費者は、新しいプレイヤを購入してCDプレイヤを置き換えていくでしょうか?

実際のところ、CDに代わるさらなる高音質媒体としては、すでにSuper Audio CDやDVD Audioなどがあり、その音質は素晴らしいものですが、どちらも一般に周知されるに至っていません。

こうした次世代の媒体が登場しても、プレイヤが普及していないからコンテンツが出ない、コンテンツが不足しているからプレイヤが売れない、という鶏と卵の理論さながらの堂々巡りに陥っているわけです。

新しいプレイヤを普及させる、というのが大変なのであれば、発想を転換して、広く普及している既存のプレイヤを使うようにしたらいいのではないか、と誰でも考えます。そこで出て来たのが、従来のCDプレイヤで再製できるSHM-CDやHQCD、Blu-spec CDなどの高音質CDです。しかし音質向上が体感しづらいのか、登場が遅きに失したのか、CD売り上げ挽回の救世主にはなれませんでした。CDという媒体そのものの寿命が尽きようとしているのかも知れません。

では、CDプレイヤ以外で、もっとも普及しているミュージックプレイヤは何でしょう? すぐに思い浮かぶのは、iPodでしょう。しかし、iPodはパソコン上のiTunesと併用するのが前提です。極論すればiPodはiTunesのおまけです。パッケージの対象は、パソコンになってしまうのです。iPod用のパッケージングというのはあり得ません。ポータブルオーディオプレイヤのユーザを想定し、アルバムをUSBメモリーで販売する試みもありますが、結局パソコンへコピーするという意味において、物理的な媒体は違うけれど、パッケージとしてはCDと変わらないものです。案の定、成功したという話はまだ聞きません。

2009年のある統計調査では、国内のポータブルオーディオプレイヤ市場でiPodのシェアが70%を超えたということなので、どうしてもiPodを次のターゲットにしたい、と思うのが人情なのでしょう。

でも、よく考えてみると、一番普及しているミュージックプレイヤはCDプレイヤでもiPodでもないのです。それは、携帯電話です。

ここ数年、国内の携帯電話の出荷台数は、減少傾向とは言え、3,000万台以上あります。iPodについては、国内の出荷台数の発表はないですが、2009年の全世界の出荷台数が4,000万台強と考えられるので(iPhoneおよびiPod touchを入れれば約2倍になります)、そこから日本だけの販売台数を予想する場合、多く見積もっても携帯電話の方が多いことは一目瞭然でしょう。

だったら、最初から携帯電話をプレイヤに想定したパッケージングを行えば、CDに変わる媒体として製品化が図れるのではないでしょうか。携帯電話で音楽を聴くと言うと、「音が悪い」、「携帯電話やキャリアを変えると聴けなくなる」、「コピープロテクトされていてバックアップできない」などの問題を指摘する人がいます。

こうした問題は、実は技術的な制限であって、解決が可能です。そして、こうした問題を解決した新たな媒体がMo-Sicなのです。

当初のMo-Sicは、携帯電話にmicroSDカードを差し込んで、そこに保存されている楽曲を再生するというアイデアで、しかも、1枚のmicroSDカードで、Docomo、AU、Softbankの3つのいずれのキャリアの携帯電話にも対応できるという画期的なものでした。

しかし、2010年の秋から、日本でもAndroidスマートフォンが台頭し始め、数年の内に主要な携帯電話は、AndroidかiPhoneになりそうな勢いで普及しています。

Androidは、microSDカードに保存された楽曲ファイルは、そのフォーマットやフォルダの構造に関係なく、ほとんど再生できてしまいます。その点については、Docomo、AU、Softbankなどのキャリアによる違いもありません。

ということは、楽曲をmicroSDににコピーさえすれば、誰でも、Androidスマートフォン向けのアルバムを販売することができるわけです。こうなると、Mo-Sicという考え方自体が、陳腐化して来ます。

そこで、indierevolution.jpでは、さらに一歩先を見て、microSDのような物理メディアにとらわれない次世代のメディアの可能性について、ここ数ヶ月検証を行って来ました。

その結果、たどり着いたのがMo-Sicの第二世代とでもいうべきMo-Sic Downloadというアイデアです。その主なコンセプトは、以下のようなものです:

1)楽曲はサーバに保管し、Androidスマートフォンへは、ダウンロード販売する。
2)保存するコンテンツは、MP3フォーマットの音源で、その音質はmicroSDカードのサイズおよびダウンロードにかかる時間以外の制限を受けない。
3)microSDカード・スロットを持ち、MP3フォーマットのファイルが再生できるすべてのAndroidスマートフォンで楽曲再生できる。
4)誰でもMo-Sic Downloadを実現できるように、オープンなプラットフォームが提供される(あるいは、サードパーティのサービスと提携またはそのようなサービスを紹介する)。
5)パソコンにも楽曲ファイルをダウンロードあるいはコピーできる(DRMがない)。

楽曲はダウンロード販売しますから、CDのようにプレス屋さんに発注して一度に大量に製作する必要がありません。家のパソコンでアップロードすればよいのです。CDのようにライブの度に持って歩く必要がなく、会場でダウンロードURLさえ周知できればよいのです。さらに、ライブの会場で、プリペイドの
ミュージックカードを販売できれば、売り上げもたてやすい上に、ファンは、その場でAndroidスマートフォンにダウンロードして、アルバムを聴きながら家に帰ることもできます。非常に自由度の高いアイデアであり、インディに最適と言えるでしょう。

Mo-Sic Downloadは、まだ始まったばかりです。今後、徐々にその詳細と全貌を明らかにしていきますので、ご期待ください。