iTunes Storeを使ったことがある人なら、そのプリペイドカードのこともご存知でしょう。コンビニなんかで額面5千円分のプリペイドカードを買うと、iTunes Storeで5千円分の買い物ができる、というものです。

こういうプリペイドカードをミュージックビジネスの世界では、ミュージックダウンロードカードなどと総称しています。AVEXの
ミュージックカードは、コンビニでも売っているので見かけた人やダウンロードに使った人もいるでしょう。ほかにも同種のミュージックダウンロードカードが何種類か出回っています。

インディでもミュージックカードを販売できれば、手続きが凄く楽になるような気がしませんか? ライブ会場で千円分のカードを売って、あとはお客さんに勝手にオンラインストアにアクセスしてもらって、自分の曲を千円分買ってもらう、というわけです。

でも、それって可能でしょうか?

日本では、インディ向けのミュージックカードのビジネスとしては、まず
対面電書がダウンロードコードを発行しているので自分で印刷して販売や配布が可能です。それ以外では、PIM recordsのPIMミュージックカードConcaなどがあります。レーベル向けとしてはM-Cardがありますが、個人で活動するインディアーティストにはやや敷居が高いでしょう。

海外にもサービスは存在しています。比較的普及しているのは、
FizzKicksDropCardsでしょう。米国はミュージックカードの先進国ですので、探せばさらに多種多様なサービスが見つかります。ヨーロッパにも似たようなサービスがいくつも存在しています。

FizzKicksもDropCardsも、まず音源をアップロードして、それぞれのストアで販売できる状態にします。次にオンラインでミュージックカードのデザインをして、枚数を指定して発注します。送られて来るカードには、個別のシリアル番号が記載されているので、カードを買ったお客さんはその番号を使ってストアで楽曲を購入できるというものです。

カードの額面分好きな曲がダウンロードできたり、最初から決まったコンテンツだけがダウンロードされたり、若干の違いはありますが、みな自分のブログやホームページで楽曲を試聴およびダウンロードできるウィジェット形式のストアがあるなど、基本機能は似たような感じです。

現在、FizzKicksだけが日本語のサイトと日本語のサポートを提供しています。DropCardsも日本から利用できますが、すべて英語でのやり取りになります。

ちなみにFizzKicksは、国内で、当日のライブを録音してライブ直後にダウンロード可能な
カードを販売したことがあります。

こうしたサービスの中で、コンテンツのアップロードやカードデザイン、発注までのすべてがオンラインで完結する完全オンディマンドなのはFizzKicksだけだと思われます。使い方を知ってしまえば、誰にも連絡せずにカード発注まで完了するのは魅力的ですが、担当者と話しながら進めたい向きには心許ない部分があるかも知れません。

さて、ミュージックカードは、売る方も買う方もやり取りが楽で、また応用が利きます。ミュージックカードの主な利用方法は、次の4つでしょう:

1)プロモーションに使う:例えば、1曲だけがダウンロードできるカードを作って、安価で販売するか無料で配ります。カードには、ホームページのURLやストアのURLなどを記載して、宣伝に使うわけです。

2)レア音源を提供する:デモ音源やライブ音源がダウンロードできるカードを作って、ファンに配るか販売します。そのカードでしかダウンロードできない音源ということになれば、コレクターズアイテムとしてカード自体にも付加価値が付いて喜ばれるでしょう。

3)CDの代わりにアルバムを販売する:カードは、CDと比べて安価に大量に製造できますし、在庫したり持ち運ぶのも格段に楽です。CDを買っても、結局はMP3にリッピングしてiPodやiPhoneで再生するのであれば、最初からMP3として直接パソコンやAndroid携帯にダウンロードできた方が、ファンにとっても楽でしょう。CDには、物理的に商品を所有すると言う喜びがありますが、カードでもある程度は似たような物質的所有欲を満たす側面があると思われますから、将来的にはCDに代わる媒体にまで成長するかも知れません。

4)CDやレコード(ビニール盤)にダウンロード音源として封入する。特にCDの音質を超えるハイレゾ音源のダウンロードカードをCDに封入すれば、ダウンロードよりCDを希望するファンに喜ばれるでしょう。

日本のインターネットの利用者の過半数は、パソコンを使わず、携帯電話を使っています。となると、Andorid携帯に直接ダウンロードできる方法は、魅力的に思われます(iPhoneについては、Appleの方針で自由にデータをダウンロードできませんので専用アプリが用意されていない場合は、パソコンでダウンロードしてiTunesで同期するしかありません)。

実際のところ、カードを作るといくらかかるのか?という疑問があると思いますが、FIzzKicksで100枚作った際の
送料および手数料込みの一番安い金額は$87.77でした。郵送方法を指定したり、QRコードなどのカードのオプションを追加すると料金は高くなります。また税関で税金が請求されることもあります(保証はできませんが、消費税込みで約12%程度と思われます)。

つまり1枚当たり、約110円の経費だから、150円で販売できれば赤字にはなりません。

他のサービスも似たような料金設定だと思われますが、アップロードできるファイルサイズに制限があったり、ダウンロード期間に期限があったりするので、事前によく調べてください。

IndierevolutionでFizzKicksにカードを発注した際は、5日以内には印刷されて出荷され、約一週間で届いていたので、全体では二週間くらいかかったことになります(FizzKicksでは、印刷に最長で5営業日、EMSは時期や郵便事情によっては最長で3週間かかることがあるとしています)。

まだ発展途上の市場と媒体なので、カードの制作や流通でもたつくこともあるだろうし、ファンの側には戸惑いもあります。しかし、何でもトライできるのがインディの強みなわけで、ライブ会場での決済手段として積極的に検討しても良いのではないでしょうか。不安があるなら、とりあえずはプロモーション用に試してみるといったアプローチでよさそうに思えます。