スマートフォンがこれだけ普及すると、インディもスマートフォン上でのプロモーションについて真剣に考えなければいけない。

スマートフォンは、フルブラウザを搭載するので、既存のホームページもそのまま表示される。自前のウェブサイトがなくても、MySpaceやFacebook、あるいはブログでも表示はできるので、一応スマートフォン上のプレゼンスは確保した形だ。

しかし、こうしたホームページのデザインは、スマートフォンを前提にしていないので見づらいし、使い勝手も良くない。チラシに掲載したURLやQRコードからホームページを開いてもらっても、小さい文字がごちゃごちゃ表示されるのを見てすぐに閉じられてしまう、ということもあるだろう。

また、スマートフォンでホームページを開いてもらうのは、一回きりの接触になりがちなのも問題だ。チラシのURLを開いて内容を確認しても、ブラウザを閉じて、チラシを捨ててしまうと、URLは覚えていないし、バンド名もうろ覚えで、二度とホームページを開けない、というのはよくある。

お気に入りに登録してもらったり、ブラウザの履歴からたどれば分かるじゃないか、と思うかもしれないが、よほど気に入らないと、そんな面倒なことをする人は少ない。

例えば、こんな話をよく聞く:友達のバンドのライブに行ったら、対バンにすごく面白いバンドが出ていた。バンド名を覚えておいて、あとで検索してみようと思っていたが、バンド名がうろ覚えで目指すホームページを検索できない。で、惜しいけど、検索は諦める。

ライブ会場で、ホームページのURLやQRコードを掲示しているし、チラシだってしっかり配っている、と言うかも知れないが、前述の通り、一度は見てくれたにしても、その後が続かないという問題は付いて回る。

スマートフォンの時代を迎えて、既存のホームページを情報発信のセンターとするやり方は、すでに時代遅れとなりつつあり、また大きな機会損失のリスクも抱えているというわけだ。

こんな問題を解決する一つの手段が、モバイルアプリだ。

最近では、アーティストのスマートフォン用アプリは珍しくない。日本でもAKB48や中川翔子さんなど、多くの芸能人やアーティストがアプリを公開して人気を得ている。

モバイルアプリのよいところは、スマートフォンにダウンロードして保存される点だ。URLやらアーティスト名やらを覚える必要がない。

インディもモバイルアプリを作っておいて、例えば、ライブ会場で(あるいは、その帰り道で)スマートフォンにダウンロードして端末に保存してもらいさえすれば、あとでゆっくりと内容を確認してもらえる。

アーティストのモバイルアプリには、最新ニュース、楽曲再生、動画再生、写真ギャラリー、イベントスケジュール、Facebookなどとの共有、ストアへのリンクなどの機能が搭載されているのが普通で、そうしたコンテンツは随時更新できる。ファンは、そんなアプリを保管しておき、折に触れて起動して、内容が更新されていないか確認してくれる。

ファンとの接触の機会が増え、露出も増え、販売機会も増えと、こんなよいものを用意しない手はないはずだ。

しかし、モバイルアプリには、手間、時間、お金が必要だから、メジャーアーティストと同じようにモバイルアプリを開発して公開するのは、無理な話。

そこで、インディなりの解決策を探すことになる。その一つの考え方が、モバイルウェブと呼ばれるものだ。

モバイルウェブは、AndoridやiOSなどのネーティブアプリではないが、ネーティブアプリと同様の動作を行うウェブサイトを指す。

技術的に言うと、HTML5、CSS3、Javascriptという技術を使って開発された特殊なウェブサイトで、単にスマートフォンの画面サイズ用に作り直したウェブサイトではない。ボタン、タップやスワイプなどのスマートフォンのインタフェースに対応し、あたかもネーティブアプリのように操作できるのが特長だ。

モバイルウェブがどんなものかよく分かるよい例が、
矢沢永吉さんのスマートフォン用サイトだろう。

ネーティブアプリに比べ、開発の敷居が低く、公開に至るまでの煩雑な手続きも必要ないから、インディでも手が出しやすい。

でも、スマートフォンでの使い勝手は良いかも知れないが、普通のホームページと同じように開いて使うんだから、ブラウザを閉じて、アーティスト名も忘れちゃったら、二度と開かれないんじゃないの?、と思うかも知れない。

そこで、このモバイルウェブをホーム画面にアイコンとして保存してもらうことがキモとなる。

iOSでもAndroidでも、ホームページをホーム画面にアイコンとして保存することができる(Androidでは、ショートカットアイコンになる)。保存されたアイコンをタップすると、そのページが自動で開かれる仕組みだ。

つまり、モバイルウェブが開いたとき「ホーム画面に保存してね」とメッセージを出してあげれば良い。ホーム画面に保存してもらえれば、いつでもアイコンから開いてもらえるようになる。

ここまでいけば、スマートフォン上の効果的なプロモーションが実現するわけだ。

後は、HTML5、CSS3、Javascriptを使ってモバイルウェブを開発するだけだ。しかし、それがインディに可能だろうか? ほとんどのインディには、無理な話だろう。

そこで、今度は、モバイルウェブを安価に開発してくれるサービスを探すことになる。そんな虫のよい話があるのか、と思ってネットを探すと、案外とあったりする。

今のところ、indierevolution.jpが把握している国内のバンドに特化したモバイルウェブのサービスは、
SpinAppFANC!だけだが、他にも探せばありそうだ。

これらのサービスでは、オンラインのデザインコンソール(CMSなどと呼ばれる)を使って、スマートフォン用のアプリを設計し、コンテンツをアップロードしたりリンクしたりして、モバイルウェブを完成させる。

出来上がった、モバイルウェブは、該当するURLを開けば即座に使える。ネーティブアプリのように、AppleやGoogleに提出したり、認可を待つ必要がない。もちろん、修正や更新もCMSで行うだけで、即座に公開することができる。

なお、SpinAppで制作されたモバイルウェブ(SpinAppでは、ホームページのように誰もが持てるアプリという意味でホームアップと呼んでいる)をiOS端末で開くと、ホーム画面にアイコンとして保存する方法の説明が自動で表示され、アイコン化を促すようになっている。残念ながら、現時点では、Androidでショートカットアイコンとしての保存を促すメッセージは表示されない。

また、ホームアップの場合、iOS端末でアイコンをタップして開くと、Safariブラウザは開かず、あたかもネーティブアプリのように単独で起動する点も特長だ。

どちらも有料のサービスなので、モバイルウェブがもたらす効果にその料金が見合うかの判断は重要だが、とりあえず無料で試せるので、とにかくモバイルでのプレゼンスとプロモーションの手段の確保がどんなものか知るためにも、将来のスマートフォン全盛の時代を見越して今からトライしてみるべきだろう。