インディが音楽で飯を食っていこうと考えた時、問題の1つに「お手本」がない、ということがあります。どうやったら飯を食っていけるのか、という方程式がまだ確立されていないのです。

CD Babyを使えば、世界中でアルバムが発売できます。でも、それは「世界中で実際にアルバムが売れる」という意味ではありません。発売しても、1枚も売れないアーティストもたくさんいるでしょう。

こうなると「インディが、世界にデビュー」なんて、聞こえはいいけど、実体は単なる夢物語の妄想でしかない、という意見も出てきます。

では、まったく成功したアーティストがいないのか、というそうでもありません。今のところ、ほとんどが海外のものばかりなので、日本ではあまり聞かない話ですが、そこそこ成功事例はあるのです。今回は、そんな成功したアーティストの例をみて考えてみましょう。

indierevolution.jpが好きな話の1つに、ヨットマンの話があります。彼女は、1年のうち11ヶ月を海上で暮らすヨットマンで、残りの1ヶ月でアルバムを録音しています。その歌は、すべて海、船、船乗り、ヨットマンの生活に関するものです。彼女のアルバムを買うのは、ほとんどが同じような船乗りですが、そんなアルバムが1年に1万枚売れるのです。

彼女の場合、本人もヨットマンとして有名で、雑誌に寄稿したりしていますから、音楽以外の部分での露出やプロモーションが期待できるのもラッキーだったのでしょう。

この事例を自分に当てはめてみてください。

まず、あなたの趣味は何ですか? プラモデル、映画、鉄道、写真、パソコン、囲碁、テレビゲーム、バードウォッチング、サイクリング、漫画、アニメ、ラーメン、ゴルフ——それぞれに何かしら趣味があるでしょうl。

では、そんな大好きな趣味について、歌を書いたことはありますか? 大好きな彼女の歌は書いたことがあるが、趣味ついては書いたことがない? なぜでしょう? もったいないですね。

そこで、趣味についての歌を書いて、発表するわけです。例えば、鉄道はどうでしょう? どんなに鉄道が好きなのか。なぜ特定の車両や路線が好きなのか。時刻表の面白さとは何なのか。そんな気持ちを歌ってみます。

鉄道ファンというのは、それが漫画やドラマのモチーフになるくらいに数が多いのです。同じ趣味を持つ仲間として、あなたのアルバムを買ってくれる可能性がありそうに思えます。何より、そんな鉄道ファンは、インターネットでも鉄道に関する単語を検索することが多いですから、あなたの「鉄道ラブ」なアルバムも検索結果に表示される可能性が高いでしょう。

マーケティングの世界でよく言われる5%理論を無理矢理に当てはめるなら、鉄道ファンで、音楽ファンで、ネットショッピングに抵抗がないグループが、あなたのアルバムをCD BabyやiTunesで発見したら、その5%位の人が買ってくれる可能性がある、と言えるのです。

indierevolution.jpが好きな別の話には、湾岸戦争に従軍中の兵士が、テント内でアコースティックギター一本で歌ったアルバムというのがあります。軍人が、従軍のつらさや懐かしい故郷のことを歌った歌ですが、元軍人や現役の兵士によく売れたということです。

このアルバムについては、実物を見たことがないので、100%真実との確証はないのですが、信頼できるソースから聞いた話なので、間違いないと思います。

つまり、あなたが何かを共有しているある特定のグループに対して、その共通する関心の対象について歌った曲を提示すれば、買ってくれる可能性に期待できて、成功の確率も高まるということなのです。

大ヒットを夢見ると、どうしても最大公約数的な、マスをターゲットにした曲を書きがちです。でも、世界中の膨大な数のアーティストがヒットを狙っているんですから、競争は苛烈です。

一方で、あるグループの5%を狙うだけなら、気が楽じゃないですか? それでも年間に1万枚売れたなら、それを成功と呼ばずして何と呼べばいいのでしょう。

繰り返しますが、音楽で飯を食うといことは、ヒットを飛ばすということではありません。チャートに入る必要もありません。曲が売れて、バイトも仕事もしなくてよくなれば、それがインディの成功なのです。

おわり