これまでにも何度か「無料で楽曲を配ることが、収益増に寄与する」という考え方を、無料で配る(楽曲)無料で配る(教則ビデオ)フリーミアムという考え方、などのページでとりあげました。

いずれの場合も、効果はありそうですが、確信がありません。それは、こうしたやり方が一般化していないため、方法論も確立しておらず、統計的な情報も不足しているためです。

ところが世界に目を向けると、実は、この無料で配ることが、当たり前のように行われていて、それで実益が出ているケースがあるのです。

それが、ブラジル北部発祥の、いわゆるリミックス系のダンスミュージック、Technobrega(テクノブレガ)です。

ブラジルには、路上でものを売る、いわゆる露天商が多くおり、ありとあらゆる商品を販売しています。音楽も例外ではなく、CDも多く売られています。しかし、発展途上国の典型として、そこで売られているヒットCDのほとんどは海賊版です。

メジャーなアーティストに取っては、海賊版の横行は頭が痛い問題ですが、インディ系のアーティストは、そこを逆手に取り、ホームスタジオで録音した楽曲を実費だけの100円程度で販売してもらっているのです。露天商の手数料を考えれば、多分、アーティストには1円も入っていないのではないでしょうか。

無料で配って、どこで利益を出しているのか、ですが、まず、ライブに来てもらいます。ライブと言っても、レーブみたいなパーティです。その入場料が売り上げになります。さらにライブのパフォーマンスを録音していて、そのライブ盤CDを会場で販売します。ここでは、100円ではなくて、正規の料金をもらいます。

つまり、無料で配る、というのが、完全な広告として機能しているのです。日本でも、インディ系のレコード店に行くと、テープやCDを無料で配っているところがありますが、あれをあえて100円で売ってみる、というのも面白いかも知れません。

無料で配るのは、お金をもらう価値がないと自ら言っているようなものですが、100円でももらえば、そこには立派な価値が発生します。その上、その100円は、レコード店の売り上げになる、ということであれば、レコード店でも積極的にCDを聴いて、お客さんの趣味に合わせて勧めてくれるかも知れません。

このムーブメントは、拡大を続けており、じきにブラジルのもっと広い地域で一般化するでしょう。すると近隣諸国へも飛び火し、南米からインディによるプロモーションの新しい形が世界に発信される時が来るかも知れません。

余談ですが、リミックス系の音楽を録音して販売することに、著作権の問題はないのか、が心配になりますが、ある種の調査によれば80%はオリジナルマテリアルで、著作権がクリアでない作品は20%程度だそうです。0%ではないところが気にはなりますが、全体として著作権意識は高いようで、その点でもムーブメントとしての将来性に期待が持てます。