インディが利用してプロモーション効果を期待できるネットラジオの一種に英国のLast.fmがあります。日本向けのサービスは、まだ本格始動していませんが、メンバー登録後、アーティストあるいはレーベル登録して権利を持っている楽曲をアップロードすることはできます。

Last.fmは、ミュージックSNS(ソーシャル・ネットワーク)に分類されるサービスですが、世界中の楽曲がかかるネットラジオのサービスも持っています。このネットラジオの部分が非常にユニークで、それぞれのメンバーが普段iTunesやiPodで聴いている音楽の嗜好に合わせて、そのメンバー専用のラジオステーションを用意してくれるのです。

専用ステーションでは、普段聴いているアーティストだけでなく、過去に聞いたことはないが、気に入りそうな曲も選んでかけてくれます。膨大な数のメンバーが聴いた曲のデータベースから、「このアーティストを聞いている人は、こっちのアーティストも好んで聞く傾向にある」といった分析を行っています。そのため、メジャーなアーティストも無名なアーティストも、同様にラジオでかかる可能性を持つわけです(当たり前ですが、有名なアーティストや曲はより多くのメンバーが聴いているので、相対的にラジオに登場する可能性が高くなり、逆にマイナーなアーティストや曲は一定数のファンがいなければラジオではかかりません)。

CD BabyIODAThe Orchard、およびNaxosとLast.fmは、アグリゲータ契約があるので、これらのアグリゲータ経由で楽曲がアップロードされたインディミュージシャンでLast.fmにレーベルアカウントを持っているなら、Artist Royalty Programで「I want to collect Radio and On-Demand royalties for all my songs.」というオプションを選んでください。なおLast.fmにレーベルアカウントを持っていない場合は、これらのアグリゲータが処理してくれるので何もする必要はありません。

アグリゲータにもよりますが、例えば、CD Babyを通してアップロードされた楽曲の方が、個人で直接アップロードした楽曲より、包括契約による分配比率が若干高くなっています。CD Babyの場合、デジタルディストリビューションのレベルを指定するDigital Distribution Optionのページで「Everything that pays」か「Do it all. Even unpaid」を指定すると、自動的にLast.fmも対象になります。

なお、CD Babyにアルバムを登録しているアーティストで、Last.fmへの転送がなかなか始まらない人は、自分で曲をアップロードして構いません。CD Babyから同じ曲が転送されると、自動的に自分のレーベルの曲がCD Baby経由で登録された曲と置き換わります(CD Babyで登録したレーベル名とLast.fmで登録したレーベル名が同じでなければなりません)。

JASRAC信託している場合は、ちょっと複雑です。JASRACは、海外の著作権使用料徴収代行団体と提携していますが、録音権を管理している英国のPPLや米国のSoundExchangeとの提携がありません。なので、必ず「I want to collect Radio and On-Demand royalties for all my songs.」というオプションを選ぶ必要があります。JASRACは、演奏権について、英国のMCPS/PRS、米国のASCAP/BMIとは提携していますが、上記の理由で、決して「I'm ineligible to collect royalties directly. I’m a member of a collection society for Radio and On-Demand use.」を選んではいけません。

自分がどのオプションを選べばよいか分からない場合は、
Which option is right for me?というページから、順を追ってオプションを選べば教えてくれます。

Last.fmのシステムの特長は、ラジオで恒常的にかかり始めると、ファンのネットワークがクモの巣のように広がり、露出が拡大して行くことです。逆に言えば、ラジオでかからない状態では、登録している意味は皆無に近いでしょう。はっきりしたことは言えませんが、リスナー数が300以下では、ラジオでかかる可能性はほとんどないようです。つまり、ある程度のファン数を持っているアーティストなら、チャンスは大いにあるでしょうが、全く無名なアーティストにとっては効果は期待できません。
このページでも少し触れていますが、リスナーは1,000人を超えると、その効果が数字に表れて来るようです。

このリスナー数というのは、案外とトリッキーで、ファンでなくても、一度でもiTunesで再生されていればカウントされます。ということは、CDを買って、iTunesでリッピングして、曲を再生するという一般に想定される手順を踏まなくても、例えば、MP3を無料でダウンロードしてもらって、一度でもiTunesで聴いてもらえばよいわけです。

つまり、Last.fmに曲をアップロードしたら、せっせとMP3ファイルを無料で配ればいいのです。Last.fmには、アップロードした曲を無料でダウンロードできるオプションがあるので、これを大いに利用しましょう(アグリゲータ経由で登録されている場合、ダウンロードなどのオプションが使えないことがあるので、注意してください)。期間限定でもいいし、アルバムの中の1曲だけでもいいですから、とにかく無料で配るのです。Last.fmのメンバーが300人聴いてくれるまで、Last.fmでフレンドを作り、無料ダウンロードに誘導してください。

しかしLast.fmをアーティストがプロモーションのために使う場合、メンバーがアーティストやレーベルであることが明確に分からないという問題があります。つまり、自分のプロフィールページで自分の曲を宣伝する手段が、用意されていないのです。これはLast.fmが、あくまでメンバーが実際に聴いた曲を基本として、新たな曲との出会いを提案する、というシステムだからでしょう。メンバーが自分の曲を直接宣伝し始めたら、MySpaceと違いがなくなってしまうし、宣伝でメッセージやコメントが埋め尽くされるでしょう。実際、Last.fmでは、フレンドに宣伝メッセージを送ったり、メンバーのページに宣伝コメントを残すと、凄まじく怒られることがあります。ある程度、互いの趣味を知った上で、「君も僕もジャムが好きだね。僕は、ジャムみたいな音楽がやりたくてバンドをやっているんだ。ちょっと聴いてみてよ」といった具合に、やんわりと宣伝するしかありません。もちろん分かった上で鉄面皮になって、宣伝と割り切って、絨毯爆撃するのもアイデアですが、多分、一度しか使えない手でしょう。

だけど全く宣伝できないというわけでもありません。ちょっと変則的になりますが、メンバーのプロフィールページに、「Please listen to our artist, "indierev". Discover Stooges Meets Beatles pop from Japan!」のような宣伝文句を入力するのです。上記のリンクはフェークですが、
<a href="http://www.last.fm/music/indierev" class="bbcode_artist">indierev</a>のようにHTMLコードを書き込んでおくことで、自分のアーティストページへのリンクを埋め込めるわけです。文字サイズやカラーは、<span style="color:red"><span style="font-size:18pt">...</span></span>のように指定できます。こうしてフレンドをいっぱい作れば、プロフィールを訪れたフレンドが、このリンクを開く可能性は高まります。

なお前述の通り、アグリゲータ経由で登録されている曲はオプションを変更できないので、自分たちのホームページやMySpaceで無料で配りましょう。少しでも多くの人に聴いてもらって、中の何人かがLast.fmのメンバーであることにも期待しましょう。

Last.fmは、アイデアもシステムも素晴らしいサービスですが、インディの中には、登録しておけば自然とラジオにかかるようになると勘違いしている人もいます。何もしなければ、10年経っても1度もラジオでかかりません。やはりそこには、プロモーションのアイデアと努力が必要なのです。