Nine Inch Nailsに見るインディの必然性

すでにご存知の向きも多いと思うが、Nine Inch NailsのTrent Reznorは、彼らのアルバムYear Zeroのオーストラリアでの定価が34.99豪ドル(3,500円程度)に設定されたことで、今年5月に、自身のブログを通じてレコード会社UMG(ユニバーサル)に対して文句を言っている。レコード会社が自ら招いた苦境を消費者から搾り取ることで乗り切ろうとする考え方は間違いだというわけだ。オーストラリアは日本同様に、英米よりもCDが高いが、この価格設定は、多分、最高値の部類だ。しかも5月に行われたこの抗議に対して、UMGの幹部は、コアなファンはいくらでも金を払うんだからいいんだ、といった回答をしたと伝えられている。

そのTrentが、この9月16日にシドニーのホーデーンパビリオンで行われたNine Inch Nailsのライブで、観客に向かって、レコード会社が消費者から搾取し続ければ音楽は盗まれて当然だ、というニュアンスで「俺たちのアルバムをどんどん盗んで友達に配れ、そして盗み続けろ(
Steal it! Steal, steal, and steal some more and give it to all your friends and keep on stealing.)」と煽動した。その怒りの大きさが計り知れる事件だろう。なお一部の報道で「(CD)を盗め」と言ったとされているが、彼の過去の「レコード会社が消費者から搾取を続けるから、音楽を盗むファンが出て来ても仕方ない」といった発言から推すと、CDを万引きして配れと言ったのではなく、P2Pで音源を配りまくれ、と言ったと考えるのが妥当だろう。

この5月の騒動でも、ファンから搾取することになるマキシシングルはもう出さないと言っているし、その後の一連の流れから、Nine Inch Nailsが遅かれ早かれUMGを離れ、インディレーベルでの活動に移行するものと考えられる。

レコード会社がアーティストの意向を無視して、アーティストと全面戦争になった例は、Princeや
George Michaelの例を出すまでもなく、日常茶飯事だ。しかし、以前なら世界的な成功にはメジャーレコード会社との契約は必須だったが、今は時代が違う。ファンを大事にし、ライブを活動の中心に据えるなら、そこにインディたる必然性が生まれる時代だ。日本でも、夢はメジャーデビューというインディが多いようだが、この機会に一度、インディとしての活動の真の意味を見つめ直して欲しいものだ。仮に今見つめ直さなくても、海外では、時代がインディの方を向いていることは事実で、遅かれ早かれ日本でもインディのパラダイムシフトが起きることは避けられないから、否応無しにインディの再定義は迫られることになる。