Radioheadの新譜について

indierevolution.jpにも、この10月10日の夕方に予約しておいたRadioheadの新譜In RainbowsのダウンロードURLがメールで届いた。新譜の評価は、indierevolution.jpの仕事ではないので、触れずにおこうと思ったが、今回の動きを非常に興味深く見ている方々も多いようで、問い合わせがちらほら来るので、その感想など書いておこう。とはいえ、やはり楽曲そのものを評価するつもりはないので、あくまで購買体験全般についての感想となる。

インディバンドの場合、自分たちのサイトで楽曲を売って、直接ダウンロードさせることは珍しくない。しかし今回、実際にダウンロードしてアルバム全体を聴いてみて、通常は味わえない、不可思議な感動があった。それは、このアルバムの値段を自分が決めたことに起因すると思われる。indierevolution.jpでは、4ポンドを指定したが、聴いた直後に「もう少し払っても良かった」ような気がした。しかし、そんな気がしただけで、根拠はない。何がそんな気にさせたのか、いずれは分析が必要だろうが、とにかくアルバムの値付けを自分で行うという新しい体験が、何かエモーショナルな部分に作用して、購入した楽曲に付加価値を与えるようだ。同じ商品なのに、値切って買った方が愛着が湧くのと同じかも知れない(逆に、値切って買った商品は、その後の扱いがぞんざいになることもあるが)。

新しい体験とは書いたが、買い手がアルバムや楽曲の値段を付けるというデジタル販売サービスはこれまでにもあったし、現在も存在する。しかし多くの場合、「とりあえず公開しましたので、気に入ったら、好きな値段で買ってください」という、パソコンソフトでいうところのシェアウェアやドーネーションウェアみたいなノリが多い。しかし今回のRadioheadの場合、メジャーレコード会社から出ても良いはずのアルバムを、好きな値段で買え、と言っているわけだから、似たようなサービスとは一線を画していると言えよう。さらにアンチメジャーというメッセージをこちらが勝手に投影しているということも確実にあって、その点でも、自分が何か新しいムーブメントの一部になったような錯覚を無意識に起こしている可能性も否定できない。

内容に少し触れておくと、音的にはかなりインディっぽい感じで、荒削りな雰囲気が全体に漂っている。とは言え、Radioheadは、これまでも曲によっては非常に荒っぽい録音も存在していたので、目新しいわけではない。むしろ、全体の空気が沈鬱な方向に向かっているところが、インディっぽいのだろう。それでいて暗いわけではなく、地下に充満したエネルギーが、地表の直下で渦巻き、今にも地上に爆発して出そうで、出ないと言う、文字通りアンダーグラウンドなパワーを感じる。メジャーレコード会社から出ていれば、一曲くらい少しは華やかで一般受けしそうな曲を入れて来そうだが、そんな思惑はあっさりと排除している。そんな音を聴くと、今回の試みにも必然性があるような気がする。同時に、そこで好みが分かれそうだ。

ダウンロード販売した売り上げについては、一切発表しないそうだが、非常に良く売れているらしい。来年初頭にCDとしてリリースされれば、それなりにチャートを上がるだろう。いずれにしろ、インディによるアルバム販売の新しい手法を大規模に試し、成功に導くことができることを証明してくれた功績は大きい。すべてのインディが同じやり方でアルバムを売れるわけではないが、インディがアルバムのデジタル販売を考える際の一つの指標となることは確かだろう。