CDを作るにしても、デジタル販売を行うにしても、マルチトラック録音された音源の各トラックの音量と音質のバランスを取って、2トラックの音源に「落とす」ミックスダウン(ミキシング)は不可欠です。

インディのミキシングは、パソコン上でマルチトラック対応の音楽ソフトを使った作業を差すことがほとんどでしょう。しかし、レコーディングエンジニアではないインディにとって、ソフトのすべての機能を使いこなすのは至難の業です。

例えば、個々のトラックでは、はっきりと聞こえる音源が、ミキシングすると、混ざり合ったようになって判然としない、という経験を持つインディは多いはずです。ベースがはっきりしないから音量を上げたら、ベースだけ音量が振り切れてしまうため、とりあえずトラック毎に左右の位置をずらして何とか別々に聞こえるように調整したという話はよく聞きます。

パラメトリックイコライザ、アンプシミュレータ、コンプレッサ、各種フィルタ、など、音楽ソフトにはミキシングで利用する機能が山ほど搭載されていて、こんな問題を解決してくれます。

でも、レコーディングの知識を持たないインディにとって、自力で解決するのは本当に大変なことです。しかも、インディが使っている音楽ソフトはまちまちで、それぞれのソフト毎に設定や使い方が異なります。なかなか、こうやればいいんだよ、と簡単に正解を提示することができません。

そこで、indierevolution.jpでは、インディならではの、インディなりのミキシングを提案したいと思います。

どんなアーティストでも、こんな曲を作りたい、こんな演奏をしたい、こんな録音をしたい、など、手本とするお気に入りの曲が存在するでしょう。世に発表される自分の曲が、こんな演奏に聞こえたらいいな、と思う1曲です。まずは、そんな1曲を見つけ出してください。

手本とする曲が見つかったら、CDからその楽曲の音源をリッピングします。Macの場合、CDをマウントすると、中身が見えるはずなので、そのまま楽曲ファイルをパソコンのハードディスクにコピーします。コピーしたファイルは、AIFF形式のファイルです。Windowsでは、リッピングソフトを使ってWAVにリッピングしてください。

次に、使っている音楽ソフトで、ミキシングしている楽曲内のトラックとして、リッピングしたファイルを読み込みます。WAVもAIFFも、ほとんどの音楽ソフトでそのまま読み込めるはずです。

読み込んだ手本のトラックの音量を、メータを振り切らないように調節します。そして、そのトラックだけを再生してください。これが、これからミキシングする曲のお手本です。

次に自分の曲のトラックを一本ずつ再生して、手本と比べます。音質、音量、音圧、エフェクト、そんなものに注意しながら、お手本の対応する楽器の音源に近づくようにトラックを調整してください。

音楽ソフトには、使える機能がいっぱいあるはずですが、そのすべてを熟知するのは大変です。でも、少なくともイコライザとコンプレッサだけは使ってみてください。アンプシミュレータの類いがあれば、やはり試してください。エコーやディレイなどのエフェクトやフィルタがあれば、実験してみてもいいでしょう。

高価で高機能なプロ用の音楽ソフトを使っていないインディには、使える機能や可能な調整にも限界がありますし、ほとんどのプラグインやフィルタは、高嶺の花でしょう。なかなか手本の通りにはいきません。でも、ここで諦めないのがインディ流です。

例えば、同じトラックを複製し、片方はコンプレッサもかけない生音あるいはそれに近い状態で残し、もう一方だけに手を入れ、この2本のトラックを上手に混ぜ合わせる、と案外と理想に近づいたりします。同様に、複製した2本のトラックに異なる調整を加えて混ぜてみてもいいでしょう(片方は高周波数を強調し、片方は低周波数を強調するとか)。結局のところ、インディの持ち味は、独創性、想像力、創意工夫、といった、そんな自由な力なのですから、とにかく実験してみるのです。

幸いにも、手本となる音源は用意されています。手本と調整したトラックを交互に繰り返し聴いて、調整を続けます。自分の感性だけを頼りに、分けも分からず、こっちのトラックあっちのトラックと、いじり回して泥沼にはまってしまうより、ずっと効率よく、そして理想に近いミキシングが実現するはずです。

なお、音質の悪いパソコンのスピーカを使ってミックスダウンを行うのは絶対にやめてください。数千円でも、けっこういいヘッドホンが買えますから、必ずヘッドホンを使ってください。ただし、人間の聴覚というのは、大音量で音を聞き続けると、特定の周波数に反応しなくなるそうです。長時間の作業では、耳に負担のない音量で行う必要があります。同じ理由で、音質も悪く、耳に負担の大きい、安価なイアフォンはお薦めできません。

ミックスダウンが完成したら、次はマスタリングということになりますが、マスタリングについては、また別の機会に触れさせてもらいます。

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