インディがCDを制作するべきかどうか、という判断は、日に日に難しくなっています。というのも、iTunes
Storeのようなデジタル販売を使えば、より安く、楽に、効率良く楽曲を販売できるからです。
特に音楽業界全体を見た場合、CDの売り上げが落ち続けていることは事実で、大金をはたいてCDをプレスする意味は薄れつつあるように思います。
もちろんCDという物理的な媒体がないと、リスナーとの接点が見えにくくなり、漠然とした不安を感じることもあります。特にライブでCDを手売りしているインディは、その時に生まれるリスナーとの交流が楽しいということもあるでしょう。あるいは一曲ずつ購入できるデジタル販売では、アルバムのトータルなコンセプトが維持できないため、どうしてもCDが必要という考え方もあります。
CDを作るべきなのでしょうか?
答は、インディによってまちまちでしょうが、一つ言えるのは、CDはまだまだ死なない、ということです。CDの売り上げは落ち続け、デジタル販売が伸び続けていても、実際のところ、2006年の時点では、少なく見積もってもCDの売り上げはデジタル販売の3倍くらいあるのです。特にインディの場合、デジタル販売サービスの膨大なカタログの中ではメジャーなタイトルに埋没しがちなため、CDを売った方が効率が良い傾向にあります。
ここにCD
Babyが発表した2008年の売り上げに関する統計情報があります。それによると、2008年に売ったCDの数は1,013,478枚で、2007年の993,175枚から2%増えたそうです(CD
Babyは、その前年もCDの売り上げが数%伸びたと言っているので、ここ数年微増傾向にあると言えます)。米国のCDの売り上げは14%減ということらしいので、2%増でも驚きです。もちろんデジタル販売は、もっと急進しており、前年比45%増の売り上げだそうです。
英国のオンライン版Telegraph紙に掲載された記事によれば、英国のThe
Leading Questionという研究所がThe Music Ally
Speakerboxというアンケート調査の結果を2009年7月にPDFファイルで公開しましたが、回答した1,000人のうち73%はダウンロードよりCDを好み、14歳から18歳までに限っても、66%がCDのが好きということです。59%のミュージックファンは、毎日CDを聴いており、23%はCDを焼いて貸し借りをしているそうです。
British Phonographic
Industryの調査でも、2008年3月から2009年3月までの音楽の売り上げの86%はCDで、残りがダウンロードということです。調査では、Napsterのようなストリーミングサービスを使っているミュージックファンは、より多くのCDを買う傾向にあるともしています。
最近の国内のある種の調査でも、CDを買わずデジタル販売しか利用しないインターネット利用者は10%強しかいないようです。このような数字を鵜呑みにして、業界全体に当てはめるのは稚拙な行為ですが、CDがまだ死んでいないことは確かでしょう。いずれはCDはなくなるとしても、それは、まだまだ先である、ということです。
CDのプレスもかなり安くなってきていますし、インターネット時代のマーケティング手法を使えば、以前よりも販売しやすくなっています。1,000枚で10万円程度の予算なら、4人のバンドで一人が2万5千円出せばいい計算です。決して安くはありませんが、ちょっとお菓子を控える、外食を控える、酒煙草をやめる、などとがんばれば捻出できる金額でしょう。それにCDが売れれば、元は取れるわけだし。
また海外では一般的なCD-Rを使った少量で格安のデュプリケーション(プレスではありません)も、日本で少しずつ普及してきたようです。
「売れなかったら、赤字になる、在庫を抱える」という不安からCDの制作を躊躇しているなら、まずはCD-Rデュプリケーションを利用したら良いでしょう。売れるか売れないか、は、楽曲の内容や品質にもよりますが、インターネットを利用して極力売りやすい環境を作る方法については、別の項で考察しますので、そちらも参考にしてください。
なお、CD Babyの創業者、Derek Siversのblogに、彼とiTunes
Storeで無料トラックを選んでいる担当者との会話が書かれているのですが、面白いので以下に要約してみます。
Derekが担当者に曲を聴いてもらうにはどうしたらいいか、と尋ねると、担当者はCDを送れ、と答えます。すでにiTunes
Storeに登録されている曲でも?、と聞き返すと、担当者は車で一時間かけてAppleの事務所までいく間にCDを聴いているから、と答えるのです。
CDの終焉が近づいていることは明白ですが、CDを聴く人がいなくなったわけではありません。デジタルだけでは、CDを聴く人には聴いてもらえません。それでもデジタルだけでいいのか、もう一度、自身に問い直してみることが必要でしょう。